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理系が考えた室内干しで3倍乾燥する物干しスペース

毎日のお洗濯は面倒なときもありますが、天気の良い日に外の風に当てて干した洗濯物は、取り込むのも気持ちがいいでものです。

逆に天気が悪い日、気温が低い冬の間、花粉の季節などなど、室内で干さないといけない時は景観も悪くなって、かなりテンションが下がってしまいます。乾きにくい室内干しでもなるべく速やかに乾かして、気分だけでも晴れやかにしたいですよね。

限られたスペースと今ある自宅の設備でできる、早く乾かすための方法を計算ずくで導き出してみます。

暑いと3倍早く乾く

除湿機やエアコンを見てみると、「洗濯乾燥モード」のような表示がある製品もあります。そのせいもあってか、湿度を低くすれば乾くようなイメージをお持ちの方が多いように感じますが、じつは洗濯乾燥には湿度よりも大事なことがあるんです。冬場のカラカラの湿度10%の部屋では一晩干しても乾かない時があるのに、夏場のちょっとムシムシと感じる湿度60%の時は2~3時間で乾いてしまう、という経験はないでしょうか?

そう、洗濯物の乾燥にとって、湿度よりも「気温」が重要なのです。

洗濯物が乾く原理

洗濯物に含まれていた水分は、乾くにつれて水蒸気として空気中に混ざっていきます。空気に混ざることができる水蒸気の量は上限が決まっていて、温度が上がるほど空気に大量の水蒸気を混ぜる事ができるようになります(混ぜることができる上限を飽和水蒸気量といいます)。

「今の気温の飽和水蒸気量に対してどのくらいの水蒸気が含まれているのか」が湿度。空気中に含まれる水分の量が同じでも、気温が高ければカラカラ、低ければジメジメするということなんです。湿度が100%になるとこれ以上空気中に水蒸気が出ていくことができなくなるため、洗濯物はまったく乾かなくなります。

気温が低い時は空気中に含むことができるMAXの水蒸気の量が少ないということが、空気が含むことができる水分の量を表す温度別の飽和水蒸気量のグラフを見ると一目瞭然です。

グラフの横軸の〇〇gの値が空気1㎥あたりに含むことが出来る最大の水分量、つまり「湿度100%のときの空気中の水蒸気の量(重さ)」です。これ以上の水分は蒸発しても水蒸気になれず、湯気の状態で水に戻ってしまいます。

グラフから気温5℃の場合は5g強、気温30℃の場合の30gくらいと読むことができますね。現在の湿度がわかると、どのくらいの水分を蒸発させることが出来るかも計算できます。

先程例に出した湿度10%と60%の例で計算してみると

この条件では夏のほうが2.7倍乾きやすい計算になります。

細かい計算が苦手な方は、

「暑いと3倍早く乾く」

これだけ覚えておいてください。

換気すると3倍早く乾く

飽和水蒸気量のグラフを見てもらってカンの良い方は気づいたかもしれません。「1㎥あたり」ということは、空気が多ければ多いほど大量の水蒸気を含むことができるということです。

体育館のような広い場所だと冬場でも暖房無しでカラッカラに洗濯物が乾くのですが、普通の住宅にはそんな広さはありませんね。そこで、大量の新鮮な空気で水蒸気を押し流すために、換気をしながら乾かすことでより早く乾燥させることができます。

換気は窓を開けるのがもっとも効果が高いですが、寒い季節・花粉などが気になる時・強風の時・外出する時などなど、窓を開けっ放しにできないタイミングもよくありますよね。そんなときは換気扇を利用しましょう。

2003年以降、住宅には換気設備の設置が義務付けられており、住宅の換気扇は「1時間に室内の1/2の空気を入れ替える事ができる性能が必要」と住宅基準法で定められています。法定ギリギリの性能でも洗濯物乾燥の性能としてもなかなか頼もしいスペックです。3時間換気扇をつけっぱなしにすると乾燥に使用できる室内の空気の量は以下のとおり。

閉め切っている場合に比べて約3.3倍乾きやすい計算になります。

細かい計算が苦手な方は、

「換気すると3倍早く乾く」

これだけ覚えておいてください。

冬場は外気温が低すぎるため、計算通り3倍とはならないこともあります。換気扇で空気を吸い出した分だけどこからか外気が室内に入ってきますので、暖房を併用しない時は気温が少しずつ下がってしまうためです。換気しても気温が変動しにくい換気扇(熱交換型換気扇 ロスナイなど)が備え付けられている家だと、冬場でも効率的に乾燥できるようになります。

最強の物干しポジションはどこ?

ここまでをまとめると

  • 暑い場所
  • 広い部屋
  • 換気しやすい場所

この2点を満たす場所が最強ポジションになりそう。

家の中でもっとも温度が高くなるのは、熱気が溜まりやすい2階の天井付近。

換気がしやすい場所は、窓際や換気扇のすぐ近く。

「2階の広い部屋の窓際の天井近く」が最強の室内干しスペースということになります。

天井から吊り下げる物干し台、ホスクリーンなどが便利ですね。持ち家であればDIYで後付けすることも出来ます。

Written by
きたやましんご
きたやましんご